マクロ派じゃなくても、ダイバーみんなが見たいとあこがれているピグミーシーホース。
ここ20年くらいで、何種類かいるのが見つかってきて、マニアックに学名で区別しています。
インドネシアのラジャアンパットに行った時に、ブリーフィングで英文の論文を見せながら、3種類のピグミーの説明を聞かされた時には、「なんで突然論文と学名が出てくるの???」とびっくりしたものです。
ピグミーシーホースの基本情報(3種類まとめて)
まずは3種類まとめて、ピグミーシーホースについて見てみましょう。
分類 | トゲウオ目 ヨウジウオ科 |
学名(属名) | Hippocampus |
英名 | Pygmy Seahorse |
分布域 | インド洋~太平洋の暖かい海 オーストラリア、バヌアツ、インドネシア、マレーシア、タイ、フィリピン、日本など |
生息環境 | 種類によって特有のヤギや海藻などに擬態して、尻尾を巻き付けて隠れている |
最大体長 | 2cm |
ピグミーシーホースの名前の由来
「ピグミー」とは、とても小さいという意味。
「シーホース」は、タツノオトシゴの英単語です。
ピグミーシーホースは、とても小さいタツノオトシゴの仲間、という意味の名前になっています。
3種類のピグミーシーホースを学名と写真で紹介
3種類のピグミーシーホースは、学名で区別されています。
学名は、科の下は、「属名(generic name)+種小名(specific name)」の構成になっていて、基本情報の表に載せた「Hippocampus」はタツノオトシゴ属になります。
ピグミーシーホースを学名と写真でいくつか紹介しましょう。
Hippocampus bargibanti(バギバンティ)
ピグミーシーホースというと、多くの人がこれを思い浮かべることでしょう。最も個体数が多く、一番大きいピグミーです。
1970年にニューカレドニアで発見され、日本、インドネシア、オーストラリア、ニューカレドニアの広い範囲にいます。
水深10m~40mで、八方サンゴのヤギの仲間(Muricella属)に付いて暮らしています。ヤギの色は赤、黄、紫と様々ですが、付いているピグミーはそれに合わせた色になっています。
Hippocampus denise(デニース)
インドネシアからソロモンで暮らしています。がんばって日本でも見つけたみたい。
比較的つるんとしたヤギ(Annella 、Muricella 、Echinogorgia)に付いています。
2003年に論文発表されています。
Hippocampus pontohi(ポントーヒ)
水深10m~30mの岩に付いた海藻やガヤに尻尾を巻き付けて、パタパタと体を揺らしています。3種の中では最も活動的で、泳いでいるのもよく見ます。
エサは甲殻類。
平べったい体で、最大2センチ。あまりにも擬態がうまいので、一度目をそらすと見つけるのが大変。
インドネシア、パプアニューギニア、日本などで見つかっています。
2008年に論文発表され、メナドで最初に発見したインドネシア人ダイビングガイドのHence Pontoh にちなんで命名されました。
次の2種類は、住む場所や色が違うことから、一旦は新種として論文に記載されましたが、今は同じ種類であることが分かっています。
Hippocampus colemani(コールマン)→ H. pontohi
オーストラリアのロードハウ島で発見され、2003年に新種として記載されています。ニューギニア島から沖縄でも報告されています。
Hippocampus severnsi → H. pontohi
インドネシアのブナケン島で発見され、H. pontohiと同じ論文に記載され、「H. pontohiと、H. severnsiは、H. colemaniと近い種類」と指摘されています。「コールマン」の方が先に記載されているのに、どうして「ポントーヒ」の名前が残ったのでしょう?知ってる方、教えてください。
2種類のピグミーシーホースに和名が付いた!!(2020年3月)
ピグミーシーホースの2種類について、鹿児島大学総合研究博物館とダイビングショップが共同で書いた論文で、和名が付けられました。
denise は、カクレタツノコ(隠れ竜の子)
ヤギの仲間のサンゴにうまく擬態していて、とても見つけづらいことから名付けられました。
pontohi は、ユリタツノコ(揺り竜の子)
海藻やガヤに巻き付いて、海藻やガヤが水で揺れているかのように体をユラユラと揺らしていることから名付けられました。
ピグミーシーホースの見つけ方は住んでいるヤギを探してライトで照らす!!
ユリタツノコを自分で探すのは、ほぼ無理なので、あきらめましょう。
ですが、よくいるぶつぶつピグミー「バギバンティ」や、カクレタツノコなら、ライトさえあれば見つけられますよ。
まず、住んでいるヤギ(シーファン)の特徴を覚えて、探しましょう。ピグミーの体に似ているヤギと覚えておく見つけやすいかも。
そして、そのヤギを見つけると、くまなくライトで照らすのです。色がくっきりするので、見つけやすくなります。
まぶしいのを嫌がって顔をそらすので、生物が居るのに気づきますよ。こんなことしていいのか、という問題もありますが…
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ピグミーシーホースはオスが育児をする
ピグミーシーホースの繁殖方法は、タツノオトシゴの他の仲間と同じ。
オスのお腹には育児嚢(いくじのう)と呼ばれる袋があり、メスはカップルとなったオスの育児嚢に卵を産みます。
この時、お腹とお腹をくっつけて、お互いの尻尾もからまりあわせて、ハート形になるそうです。
オスは育児嚢の中で卵を受精させた後、酸素や栄養素を供給して卵を育てます。
ピグミーシーホースの稚魚は孵化後もオスのお腹で過ごし、自分でエサを食べられるようになるとお腹から出て行きます。
その頃にはメスが産卵できるようになっていて、次のサイクルの繁殖に移るようです。
ピグミーシーホースなどのタツノオトシゴの仲間を見つけたら、お腹が膨らんでないかも確認してみてください。上の写真のようにお腹がふくらんでいたら、卵か稚魚を育てているオスです。
ピグミーシーホースまとめ
ダイバーみんなが見たいとあこがれているピグミーシーホースには3種類が見つかっていて、学名で区別されています。
よく見るのは、Hippocampus bargibanti(バギバンティ)。一番大きくて数も多く、ぶつぶつした体が特徴。
数は少ないけど日本でも見つかっている2種に和名が付きました。
つるんとして細長い体のdenise(デニース)は、カクレタツノコ(隠れ竜の子)。
1センチ未満で平べったく、海藻などに尻尾を巻き付けてパタパタ揺れているpontohi(ポントーヒ)はユリタツノコ(揺り竜の子)。