「海のギャング」とも呼ばれる危険な魚で、シュノーケラーやダイバーに「サメより怖い」と恐れられているゴマモンガラとキヘリモンガラ。
もちろん、やみくもに怖がる必要はありませんが、どんな魚なのかを知っておくのが大切です。
今回はそんなゴマモンガラやキヘリモンガラの生態や危険な時期、逃げ方についてご紹介していきます。
ゴマモンガラやキヘリモンガラの生息域
ゴマモンガラやキヘリモンガラは熱帯、亜熱帯地方の広い範囲に分布し、日本では沖縄や奄美諸島などでは成魚もよく見られる普通種です。
幼魚は黒潮に乗って北上する死滅回遊魚として、紀伊半島や伊豆半島などでもみられます。
貝も砕く強靭な歯とあごの力が武器
沖縄などの暖かい海でシュノーケリングやダイビングしているとよく出会うゴマモンガラ。
目をぐりぐりと動かせながらも、いつも何かを食べていませんか?
口を下に直立してぐるぐる回りながら砂をほじり返したり、水流を吹きかけたりして、貝やカニを探していますよね。サンゴをかじっているのもよく見ます。
強靭な歯を持ち、あごの力がとても強く、貝や甲殻類やウニでも殻ごと砕いて食べます。
ゴマモンガラは危険な魚!?
- どこまでも追いかけられた
- すごい力でフィンを引っ張られてびっくりした
- 噛まれて歯がウエットスーツを貫通して血が出た
- 攻撃されてマスクが吹っ飛んだ
なんて「恐怖のゴマモン話」、ダイバーなら聞いたことがあるでしょう。
ご安心ください。いつでも危険なわけではなく、サイズが数倍も大きい人間を追いかけるのには理由があるのです。
ゴマモンガラやキヘリモンガラは卵を守りたいだけ
ゴマモンガラやキヘリモンガラは危険生物として名前がよく挙がりますが、常に危険性が高いわけではありません。
卵や縄張りを守る繁殖期に警戒心が強くなり攻撃性がとても高くなるのです。卵を守るために、なわばりに入ってきた敵を追い払ったり攻撃しているわけです。(写真は卵を守るキヘリモンガラ)
繁殖期ではない時期はそれほど危険ではありません。餌を食べている時は近寄りやすく、格好の撮影タイミングです。
しかしもともと気性の荒い種類の魚ではあるので、近づきすぎないようにしましょう。適度な距離を保って観察する分には問題ありません。
ゴマモンガラやキヘリモンガラの繁殖行動
ゴマモンガラやキヘリモンガラの繁殖期は6~9月ころです。
砂地に点在する岩場などにすり鉢状の産卵床を作り、卵を産み付けてメスが守ります。繁殖期のゴマモンガラやキヘリモンガラは非常に警戒心が強く、縄張り(テリトリー)の中に侵入する生き物を必死で追い払います。
危険になる繁殖期は夏休みの6~9月
ゴマモンガラやキヘリモンガラが危険生物になる繁殖期は6~9月頃。この時期のシュノーケリングやダイビングでは、ゴマモンガラやキヘリモンガラに注意しましょう。
ちょうど夏休み。
沖縄でシュノーケリングしている時にも会いやすく、シュノーケリングするような浅い所でも巣を作っています。小さいお子さん連れのご家族は、地元の人やマリンスポーツショップのスタッフなどに、そのビーチが安全か確認するのをおすすめします。
ゴマモンガラやキヘリモンガラの危険性は、かまれること
ゴマモンガラやキヘリモンガラの危険性は、その攻撃的な性格はもちろんのこと、鋭い歯と強い顎の力にあります。
縄張りに入ってしまった場合は、まず追いかけられますが、同時に噛みつきながら攻撃されてしまいます。
万が一噛みつかれると、ウェットスーツは簡単に貫通してしまいます。さらに肌が露出している場所を噛まれると、より大きなけがになる可能性も高いです。噛まれて指を失った人もいるほどです。
こうしたことからプロのダイバーからも、繁殖期のゴマモンガとやキヘリモンガラはサメよりも怖い!! と恐れられています。
ゴマモンガラやキヘリモンガラに嚙まれても死亡することはない
噛まれた場合、落ち着いて状況を把握してください。そして、ダイビングをやめて浮上するか、ダイビングを続けるか、判断してください。
毒はないので、噛まれたくらいでは死亡することはありません。
動脈を噛まれたなど、出血が止まらない場合は、ダイビングをやめて浮上して、陸上で手当てをしてもらいましょう。
カワハギに近い「モンガラカワハギ科」の魚で毒はない
ゴマモンガラとやキヘリモンガラはフグ目モンガラカワハギ科の魚です。フグ目の魚ですが、毒はなく、どちらかと言うとカワハギに近い種類です。
ですが、カワハギのように食用にされるわけではなくスーパーの店頭に並ぶことはありませんが、沖縄では刺身や塩煮にして食べているようです。
体当たりされてマスクが割れたダイバーがいる
ゴマモンガラやキヘリモンガラにアタックされてどうなるか。
体当たりされて、マスクが割れたという体験を聞いたことがあります。
この場合は、なんとかしてバディやガイドに気づいてもらいましょう。
そしてダイビングをやめて、あたりを見づらいでしょうからバディやガイドさんと一緒にゆっくり浮上して、安全停止すれば、安全にダイビングを終えることができます。
ゴマモンガラやキヘリモンガラに嚙まれた際の手当
ゴマモンガラやキヘリモンガラに嚙まれてしまった場合、血が出ていることでしょう。
防水性があり、傷の手当てもできる絆創膏を貼張って手当てしましょう。
傷口を覆って、傷による出血などの体液を利用して皮膚の再生を助けてくれるモイストヒーリングの絆創膏がおすすめです。
日常生活のケガにも対応できるので、お手元に用意しておきましょう。ログブックにはさんでおくのもおすすめ。
商品としては、ジョンソンエンドジョンソンの、こちらの商品が安心して使えます。
完璧に防水なので、この絆創膏を貼れば海水がしみることもないので、次のダイビングも参加して大丈夫です。
ゴマモンガラやキヘリモンガラから逃げる方法は横に泳いでなわばりから出ること
ダイビング中にゴマモンガラやキヘリモンガラの縄張り(テリトリー)に侵入して追いかけられた場合は、できるだけ早くなわばりから出ましょう。
ゴマモンガラやキヘリモンガラの縄張りは、卵を中心としたすり鉢状(上に向かって開く円錐状)。左右だけでなく、上下にも広がっています。
水深を上げるだけではいつまで経っても縄張りから出たことになりませんし、減圧症になる恐れがあるので絶対にNG。
ゴマモンガラやキヘリモンガラに追いかけられた場合は、横方向に逃げて縄張り(テリトリー)から出ましょう。
なわばりから出ると、追うのをやめてくれます。
噛まれそうになったらフィンやカメラなどで身を守ろう
噛みつかれたり、噛みつかれそうになったりした場合は、フィンや水中ライト、カメラなどで応戦してください。
生き物に危害を加えるのはマナー違反ですが、攻撃を受けそうな場合は、あなた自身の安全を第一に考えて体を守りましょう。
ゴマモンガラの基本情報
分類 | フグ目モンガラカワハギ科 |
沖縄の方言名 | ジキランカーハジャー |
学名 | Balistoides viridescens |
英名 | Titan triggerfish |
分布域 | 沖縄、奄美、小笠原など、熱帯、亜熱帯地方 幼魚は紀伊半島、伊豆半島にも(死滅回遊魚) |
最大体長 | 70cm |
危険な時期 | 6~9月の繁殖期 |
ゴマモンガラとやキヘリモンガラは、フグ目モンガラカワハギ科の魚です。
フグ目の中でも、カワハギに近い種類。ですが、カワハギのように食用にされるわけではなくスーパーの店頭に並ぶことはありませんが、沖縄では刺身や塩煮にして食べているようです。
モンガラカワハギはかわいいけど?
モンガラカワハギ科には、モンガラカワハギなど小型~中型でカラフルな魚が多い中で、ゴマモンガラとキヘリモンガラは大きくなると約70cmと、大型の種類です。
キヘリモンガラは、ゴマモンガラよりは数が少ないですが生態は同じなので繁殖期には注意が必要です。
一方でモンガラカワハギはおとなしい魚で、写真を撮ろうとしても寄らせてくれず逃げてしまいます。
また、繁殖期に追われた経験もありません。
「モンガラカワハギ科」は英語で「Triggerfish」。背びれの形が銃の引き金に似ているから名づけられました。
幼魚時代の体のはんてん模様が名前の由来
ゴマモンガラの幼魚はかわいらしく、いかにも悪そうな成魚の姿とは全く異なります。
クリーム色の身体にゴマのような小さな斑点模様がある様子から、「ゴマモンガラ」と名付けられました。
可愛らしい幼魚はダイバーに人気のある魚ですが、どちらかというと珍しく、出会う機会は成魚よりも圧倒的に少ないです。
「ツマグロモンガラ」は成魚の模様に由来する別名
成魚は「ツマグロモンガラ」の別名でもよばれています。「ツマ」とは和服の縁のことで、ヒレの縁が黒く縁どられることからそう呼ばれています。
まとめ
「海のギャング」として恐れられるゴマモンガラですが、適切な知識を持っていれば必要以上に恐れることはありません。
ゴマモンガラやキヘリモンガラが危険なのは繁殖期になる初夏の6月~9月です。この時期に沖縄などで潜ったりシュノーケリングする場合はゴマモンガラに近寄らないよう注意をしましょう。
なるべく遠くからゴマモンガラを発見できるように、視野を広くして潜るのも大切です。
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