「海のギャング」とも呼ばれる危険な魚で、サメより怖いと恐れられているゴマモンガラ。
もちろん、やみくもに怖がる必要はありませんが、どんな魚なのかを知っておくのが大切です。
今回はそんなゴマモンガラについてご紹介していきます。
貝も砕く強靭な歯とあごの力が武器
沖縄などの暖かい海でのダイビング中によく出会うゴマモンガラ。
目をぐりぐりと動かせながらも、いつも何かを食べていませんか?口を下に直立してぐるぐる回りながら砂をほじり返したり、水流を吹きかけたりして、貝やカニを探していますよね。サンゴをかじっているのもよく見ます。
強靭な歯を持ち、あごの力がとても強く、貝や甲殻類やウニでも殻ごと砕いて食べます。
幼少時代の体の斑点模様が名前の由来
ゴマモンガラの幼魚はかわいらしく、いかにも悪そうな成魚の姿とは全く異なります。
クリーム色の身体に小さな斑点模様がある様子から、「ゴマモンガラ」と名付けられました。
可愛らしい幼魚はダイバーに人気のある魚ですが、どちらかというと珍しく、見る機会は成魚よりも圧倒的に少ないです。
「ツマグロモンガラ」は成魚の模様に由来する別名
成魚は「ツマグロモンガラ」の別名でもよばれます。「ツマ」とは和服の縁のことで、ヒレの縁が黒く縁どられることからそう呼ばれています。
ゴマモンガラの生息域
ゴマモンガラは熱帯、亜熱帯地方の広い範囲に分布し、日本では沖縄や奄美諸島などでは普通種です。
幼魚は黒潮に乗って北上する死滅回遊魚として、紀伊半島や伊豆半島などでもみられます。
ゴマモンガラの繁殖行動
ゴマモンガラの繁殖期は6~9月ころです。
砂地に点在する岩場などに産卵床を作り、卵を産み付けてメスが守ります。繁殖期のゴマモンガラは非常に警戒心が強く、縄張りの中に侵入する生き物を必死で追い払います。
ゴマモンガラは危険な魚!?
- どこまでも追いかけられた
- すごい力でフィンを引っ張られてびっくりした
- 噛まれて血が出た
- 攻撃されてマスクが吹っ飛んだ
なんて「恐怖のゴマモン話」、ダイバーなら聞いたことがあるでしょう。
ご安心ください。いつでも危険なわけではなく、サイズが数倍も大きい人間を追いかけるのには理由があるのです。
ゴマモンガラは卵を守りたいだけ
ゴマモンガラは危険生物として名前がよく挙がりますが、常に危険性が高いわけではありません。
卵や縄張りを守る繁殖期に警戒心が強くなり攻撃性がとても高くなるのです。卵を守るために、なわばりに入ってきた敵を追い払ったり攻撃しているわけです。(写真は卵を守るキヘリモンガラ)
繁殖期ではない時期はそれほど危険ではありません。餌を食べている時は近寄りやすく、格好の撮影タイミングです。
しかしもともと気性の荒い種類の魚ではあるので、近づきすぎないようにしましょう。適度な距離を保って観察する分には問題ありません。
危険になる繁殖期は6~9月
ゴマモンガラが危険生物になる繁殖期は6~9月頃。この時期に潜る場合は注意しましょう。
ちょうど夏休み。
沖縄でシュノーケリングしている時にも会いやすく、シュノーケリングするような浅い所でも巣を作っています。小さいお子さん連れのご家族は、地元の人やマリンスポーツショップのスタッフなどに、安全か確認するのをおすすめします。
ゴマモンガラの危険性はかまれること
ゴマモンガラの危険性は、その攻撃的な性格はもちろんのこと、鋭い歯と強い顎の力にあります。
縄張りに入ってしまった場合は、まず追いかけられますが、同時に噛みつきながら攻撃されてしまいます。
万が一噛みつかれると、ウェットスーツは簡単に貫通してしまいます。さらに肌が露出している場所を噛まれると、より大きなけがになる可能性も高いです。噛まれて指を失った人もいるほどです。
こうしたことからプロのダイバーからも、繁殖期のゴマモンガラはサメよりも怖い!! と恐れられています。
ゴマモンガラから逃げる方法は横に泳いでなわばりから出ること
ダイビング中にゴマモンガラの縄張りに侵入して追いかけられた場合は、できるだけ早くなわばりから出ましょう。
ゴマモンガラの縄張りは、卵を中心としたすり鉢状(上に向かって開く円錐状)。左右だけでなく、上下にも広がっています。
水深を上げるだけではいつまで経っても縄張りから出たことになりませんし、減圧症になる恐れがあるので絶対にNG。
ゴマモンガラに追いかけられた場合は、横方向に逃げて縄張りから出ましょう。
なわばりから出ると、追うのをやめてくれます。
噛まれそうになったらフィンやカメラなどで身を守ろう
噛みつかれたり、噛みつかれそうになったりした場合は、フィンや水中ライト、カメラなどで応戦してください。
生き物に危害を加えるのはマナー違反ですが、攻撃を受けそうな場合は、あなた自身の安全を第一に考えて体を守りましょう。
カワハギに近い「モンガラカワハギ科」の魚で毒はない
ゴマモンガラはフグ目モンガラカワハギ科の魚です。フグ目の魚ですが、毒はなく、どちらかと言うとカワハギに近い種類です。
ですが、カワハギのように食用にされるわけではなくスーパーの店頭に並ぶことはありませんが、沖縄では刺身や塩煮にして食べているようです。
モンガラカワハギはかわいいけど?
モンガラカワハギ科には、モンガラカワハギなど小型~中型でカラフルな魚が多い中で、ゴマモンガラとキヘリモンガラは大きくなると約70cmと、大型の種類です。
キヘリモンガラは、ゴマモンガラよりは数が少ないですが生態は同じなので繁殖期には注意が必要です。
「モンガラカワハギ科」は英語で「Triggerfish」。背びれの形が銃の引き金に似ているから名づけられました。
まとめ
「海のギャング」として恐れられるゴマモンガラですが、適切な知識を持っていれば必要以上に恐れることはありません。
ゴマモンガラが危険なのは繁殖期になる初夏です。この時期に沖縄などで潜る場合は注意をしましょう。
なるべく遠くからゴマモンガラを発見できるように、視野を広くして潜るのも大切です。
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