2024年2月13日沖縄県八重山諸島の与那国島で、神奈川県在住の39歳の女性がダイビング中に体調不良を訴え緊急浮上した後、心肺停止状態となり、島の診療所に搬送されました。
その後、心肺は再開したのですが、意識不明の状態が続いたため、石垣島の病院に空路にて搬送されましたが、同日午後11時半ごろ死亡が確認されました。
この記事では、事故の内容、事故を起こしてしまった要因、同じ事故に遭わないためのアドバイスをご紹介します。
与那国島ダイビングの特徴
日本最西端の有人島である与那国島。
「海底遺跡」や「ハンマーヘッドに代表される大物の海」など、魅力的なダイビングポイントがあります。
与那国島のダイビングポイントの多くは、水深が深く、潮の流れが速く、中~上級者向けになります。
ボートダイビングが主流で、そのうちの多くは、水流に流されながら泳ぐドリフトスタイル。
エントリー後は、グループでまとまって潜航し、みんなで同じ水深を保ちながら泳ぎ(流され)、みんなでまとまって安全停止を行い、浮上することになります。
このようなドリフトダイビングのスキル、一定の水深にとどまる中性浮力など、基本的なダイビングのスキルを身に着けていることが、安全に潜るためには必要になります。
事故発生時の海況や気象状況
事故当日の与那国島の天気は、晴れ、気温:19~24℃、南東の風5mで、ダイビングが危険になるほどの気象条件ではありません。
海洋状況は、水温:24℃、透明度:15m、波:1.5m。
与那国島としては透明度が良くない日だったようですが、15mの透明度は、通常のダイビング(ドリフトダイビングを含む)では、ガイドにもゲストのダイバーにもそれなりに快適にダイビングできる条件です。
事故が起こった潜水ポイント
事故が起こった潜水ポイントは、「西崎灯台の沖合」と報道されています。
季節や風向きなどから、「西崎(うりざき)」でのハンマーヘッドシャークを目的としたボートダイビングだったと考えられます。
南東から5mの強めの風が吹いていたようですが、潜ったポイントは島の影になる場所(風下)なので、風速ほど海は荒れてはいなかったはずです。
事故の経緯
事故が起こった経緯について、時間を追ってみていきましょう。
2/13 9:20 ガイドと他のゲスト1人の3人でダイビングを始める
2024年2月13日 9:20頃に、ガイド1名、ゲスト2名の合計3名でダイビングを始めました。
ダイビング開始から5分後 事故者が体調不良を訴える
ダイビング開始から5分後、事故者の女性は体調不良を訴え、ダイビングをやめて水面まで浮上します。
2/13 9:40 ダイビングボートから118番通報
午前9時40分ごろ、ダイビングボートから、「30代女性が船上にて心肺停止。ダイビング中に気分不良を起こした」と、消防指令センターを通じて118番通報を行いました。
事故者の女性は、与那国島内の診療所に搬送されました。
2/13 23:30 死亡が確認される
女性の心肺は再開しましたが、意識不明の状態が続いたため、石垣市の病院に搬送されます。
午後11時半ごろに死亡が確認されました。
事故の原因:ショップ側
この事故の経緯を見る限りでは、ショップ側にダイビングガイドをする上での問題点は見当たりません。
ガイド1人に対してゲスト2人という少人数でのダイビングも、ゲストにとっては安心な人数比です。
今回の事故の原因は、ガイドの能力や海洋状況などではないように思えます。
それでは、どうして事故が起こってしまったのでしょうか。
お客の個人的な情報(体調)を把握できていなかった
可能性として、ショップが、事故に遭われた女性がダイビングをする上での、体調などの個人的な情報を把握できていなかったことが考えられます。
与那国島で潜るにはそれなりのダイビングのスキルが求められます。
このため、ガイドをする(潜りに連れていく)ための、経験本数などのダイビング履歴は把握していたと思います。
ですが、病歴までは把握しきれていなかった可能性はあります。
なにか申告していない持病を持っていた可能性があるということです。ここで言う、持病の中には、耳抜きがしづらい、副鼻腔が抜けづらいなどダイビング特有の症状も含まれます。
ドリフトダイビングの失敗ではない
ドリフトダイビングの事故が続くせいか、ドリフトダイビングが悪い、という報道が目につきます。
ドリフトダイビング中に発生した事故ではありますが、ドリフトダイビングはこの事故の原因ではありません。
ドリフトダイビングは水流に流されながら移動するわけなので、ダイバー自身はあまり泳ぐ必要がなく、合理的なダイビングスタイルという面もあります。
フィン(足ひれ)を付けていることもあり、流れに逆らって泳ぐこともできます。
一部の上級者が激流に突撃する場合は例外。初心者~中級者にとっては危険なので参加しないで!
事故の原因:ダイバー側
ダイバーには、事故を引き起こす原因があったのでしょうか。
ストレスを抱えた状態でダイビングを開始
女性が与那国島の海でストレスを抱えて、エントリーしたとしても不思議ではありません。
このストレスは、普段のダイビングでは水中でできていたことが、急にできなくなってしまったり、息苦しさを覚えたりなど、マイナスの影響をダイビングに与えます。
ダイバーは、
・自分のダイビングスキルがこれから潜るポイントのレベルに通用するのか?
・安全に潜れるのか?
など不安な気持ちで「ドキドキ」して潜り始めることもあります。言い換えるなら、ストレスを感じながらエントリーすることもあるのです。
それが、初めて潜るポイントや、波が高い、潮が強い、などこれまで経験したことのない海洋状況ならなおさらです。
持病による体調悪化
ダイビングを始めて5分後に体調不良を訴え、緊急浮上したということですから、なにか持病が発病してしまったのでしょうか。
また、耳抜きができずめまいなどを起こし、パニック状態になってしまうと、安全ではない速度で急浮上してしまうかもしれません。この場合、空気栓塞症(エアーエンボリズム)や減圧症を起こしてしまい、命を落とすこともあります。
同様の事故をおこさないための対策
今回と同じダイビング事故を起こさないための対策を考えていきましょう。
ガイドとゲストのコミュニケーションが大切
ゲストは、これまでの経験の中で自分がダイビングにおいて苦手にしていることや持病などがあればガイドに相談することが大切です。
話すことで、ストレスが軽減されることも多いですし、なにより話を聞いたガイドは弱いところをサポートしてくれます。
ショップとダイバーのコミュニケーションはダイビング事故の防止策としては非常に大切なことです。
体調が悪い場合はダイビングをキャンセルする
ダイビングする日は、いつもよりしっかり体調をチェックしましょう。
体がむくんでいたり、いつもより頭が痛い、いつもより鼻水が出る、なんて場合は、ダイビングをキャンセルしましょう。
また、高血圧、高脂血症のような生活習慣病も、ダイビングには悪影響を及ぼします。
健康でダイビングを続けるためには、食べすぎや飲みすぎはほどほどに。日頃の体調管理にも気を配りましょう。
まとめ
2024年2月13日沖縄県の与那国島で、神奈川県の39歳の女性がダイビング中に体調不良を訴え緊急浮上しました。その後、意識不明の状態が続き、この日の午後11時半ごろ死亡が確認されました。
ダイビングを始めてすぐに体調が悪くなったため、万全な体調ではなかったのかもしれません。
不安やストレスを感じていたり、体調がいつもと違うような場合は、ダイビングショップのガイドやインストラクターに相談しましょう。
2023年~2024年に発生したダイビング事故
2023年10月10日 沖縄県座間味嘉比島での体験ダイビング中の死亡事故
2023年9月18日 沖縄県西表島沖オガンでのドリフトダイビング中の死亡事故
2023年9月14日 東伊豆稲取海岸でセルフダイビング中の死亡事故
2023年6月19日 沖縄県糸満沖ルカン礁でのドリフトダイビング中の漂流事故