2023年9月18日、沖縄県の西表島南西にある中御神島(オガン)の東の沖合でドリフトダイビングをしていた2人の男性が行方不明になる事故が発生。
2人のインストラクターと8人の客でドリフトダイビングを行い、先に浮上した2人の客がボートに戻れず行方不明に。1人は約3時間後に水中で発見されましたが、死亡。もう1人については3日間捜索しましたが見つかりませんでした。
この記事では、事故の詳しい内容、事故を起こしてしまった要因、同じ事故に合わないためのアドバイスをご紹介します。
中御神島の特徴
中御神島(オガン)は沖縄県西表島の南西約15kmの無人島です。
黒潮の支流が当たる場所なので、大型の回遊魚が期待できるダイブサイト。抜群の透明度の海、潮の流れに乗って海中を移動するドリフトダイビングが主流です。
ドリフトダイビングは、エントリーした後、海水の流れに乗って移動し、エントリーしたのとは異なる場所でエキジットし、船にピックアップしてもらうダイビング方法。
流れが速いので、スムーズな潜降、流れていても一定の水深を保てる中性浮力など、スキルが要求されるダイビングです。
ダイバーの間では、オガンに行けたことや、オガンでダイビングしたことがステータスになるようなポイントだそう。
事故の経緯
事故が起こった経緯について詳細に説明します。
9/18 10:30 2名のインストラクターが8名のお客を引率してダイビング開始
2023年9月18日 10:30頃エントリー。
ガイドと5名のお客、ガイドと2名のお客の2グループでオガンでのドリフトダイビングダイビングを楽しんでいた。
天候・視界共に良好だったが、水中は場所によっては流れがあったようだ。
9/18 11:30頃 2名のお客がグループと別れて先に浮上
5名のうちの2名のタンクの残圧が浮上開始の目安にまで減ったので、その2名だけを先に水面に浮上させた。
9/18 11:30より少しあと 全員が水面に浮上し2名がいないことに気づく
2名に浮上の指示を出した後もガイドは水中に残り、残りの2人のお客と一緒に安全停止を行った後、水面に浮上した。
この際に、先に浮上させた2名がいないことに気づいた。
9/18 12:30頃 海上保安庁に118番通報
1時間ほどあたりを探したが見つからないので、ダイビング船の船長が海上保安庁に118番通報した。
巡視船艇や航空機による捜索が開始される。
9/18 14:30 1名発見
海上保安庁の捜索により、1人が中御神島東の沖合で意識不明の状態で沈んでいるところを発見。石垣市内に搬送されたが、死亡が確認された。
9/18午後 ~ 9/21午前 残る1名の捜索
残る1名の行方不明者を航空機やのべ7~8隻の船を用いて捜索した。
9/21 12:00 捜索打ち切り
残る1名については、有力な手掛かりがなく、専従捜索を打ち切り、通常のパトロールと合わせた捜索へ切り替えた。
2024/3/28 ショップへの処分が公表された
ショップは20日間の営業停止、ショップ名も公表されました。 2023年9月18日に沖縄県の西表島南西にある中御神島(オガン)で発生した、ドリフトダイビングの死事故の続報が入ってきま ...
こちらに簡単にまとめています
ショップが20日間営業停止! 西表島オガンのドリフトダイビングの死亡事故(2023年9月18日)
事故の原因: ショップ側
2名のお客だけを先に浮上させたのが事故の最大の原因であることは間違いありません。
なんでそんなことしたの?と突っ込み所満載なこの事故。ショップ側の事故の原因・要因について検討します。
おだやかな海でスキルのあるダイバーなら先に浮上させることはある
流れのないおだやかな海域で、エア切れしたお客を先に浮上させるのは、珍しいことではありません。ただし、誰でもというわけではなく、ガイドがスキルを把握していて、自分達で安全停止してボートに戻ることができるダイバーに限ります。
体格の大きい男性は呼吸量が多いので、ベテランダイバーでもエアの消費は早くなりがち。
こういうダイバーはいつの間にかいなくなっているものです。
1時間もダイビングしていてお客だけを先に浮上させるのは変
ダイビング時間は、通常40分から60分。1時間を超えて水中にいるのは、全体的に浅かった場合くらい。
深かったり、ドリフトダイビングは、水中にいる時間は短めです。
報道されている時刻は正確ではないかもしれませんが、1時間程度ダイビングしていて、お客だけを先に上げるのは、かなり変です。
残った3名が常連客で、サービスしたかったんでしょうか・・・
流れている海域でのドリフトダイビングでお客だけを浮上させる安全性は?
本来、安全停止や浮上は全員が同じタイミングで行うべきであり、ダイバーとインストラクターが離れて行動すると事故に遭いやすくなります。
流れの速い海域でグループから離れて浮上するのは、流されてしまう可能性があり、非常に危険。3分の安全停止の間だけでも、相当移動しているはずです。
今回の事故が発生した中御神島のような、流れが速く、流れを読みにくいような海域で、お客だけを先に浮上させる判断は正しいとは言えません。
先に浮上した2名はボートになぜ乗れなかったのか?
ドリフトダイビングでは、ボートはダイバーの泡を追いかけながらグループについて移動するのが通常。
また、あたりの海況を熟知したベテランの船長であれば、水面の様子で、ダイバーの流れるルートや浮上場所をざっくりと把握しているもの。
ボートが付いて来てくれていることを信用できているからこそ、安心して水中で流れに身を任せて移動して楽しめるのです。
この事故の場合、ボートの船長も、ドリフトダイビングに対応するスキルが低かった可能性があります。
ドリフトダイビングは海域を熟知した地元のショップを選ぼう
ドリフトダイビングで漂流してしまう事故は、ダイビングのガイドと船の船長があたりの海況をよく知らず、状況変化に対応できなくて起こることが多いです。
透明度が高くて魚影の濃い外洋の島は、必ず流れがあります。上げ潮、引き潮によって、流れの向きが変わります。
沖縄本島から離島に遠征、石垣島から離島に遠征などではなく、海域を熟知した地元のショップを選ぶことをおすすめします。
事故の原因: ダイバー側
一方で、ダイバー側には事故を起してしまう要因がなかったのでしょうか。この点も検討してみます。
2名のお客はエアの消費が早かったのか?
エアの消費が早いので先に上げたと報道されていますが、1時間程度ダイビングしていた様子。
1時間もダイビングしていれば、全員で安全停止に入るのが普通です。
ダイビングスキルは十分だったのか?
先に浮上させても大丈夫だと、イントラが判断したくらいなので、事故者2名は、それなりのダイビングスキルはあったのだろうと想像できます。
ですが、流れの強い海に慣れていないけど、「せっかく西表島で潜るならオガンに行きたい」と、無理なリクエストをした可能性もあります。
ダイビングに適した体調だったのか?
事故者は、57才の男性と、63歳の男性。
ダイビングに適した体調ではなかった可能性は十分にあります。羽目を外して前夜に飲みすぎていた可能性もあります。
海底に沈んでしまったダイバーには、血栓ができたり、減圧症による気泡が脳血管を詰まらせて、意識障害を起こしてしまった可能性もあります。
50代半ばを過ぎると、慎重なダイビングをした方が良さそうです。
バディだったのか、当日いっしょになっただけの他人だったのか
先に浮上させられた2名、知り合いだったのでしょうか。浮上中や安全停止中にトラブルがあったら助け合えるバディだったのでしょうか。
見つかった一人は、海底に沈んでいたそう。
バディがウエイトを外してあげれば、そんなに早く沈むことはなかったでしょう。
(沈んでいたから見つけやすかった、とも言えそうですが。)
安全停止できていたのか
意識不明で沈んでいるところを見つけてもらう、流されて見つからない、にはあまり影響はありませんが、この2名、安全停止できていたのか気になるところ。
ドリフトダイビングの最後には、シグナルフロートをあげて、3分間の安全停止を行います。
シグナルフロートをボートの船長が見つけて、近くで待ってくれるのが通常。
シグナルフロートをあげて安全停止できていなかったのも、事故につながった原因かもしれません。
また、ガイドなしでのバディダイビングに慣れていない場合、ガイドから離れた不安感から、安全停止中にパニックになってしまった可能性もあります。
同じ事故を起こさないための対策
今回と同じダイビング事故を起こさないための対策を考えていきましょう。
あなたのスキルに合ったポイントでダイビングしましょう
どこかで背伸びしないと、スキルアップしないのは分かります。
背伸びしすぎて命を落としては、なんにもなりません。
外洋は、流れや風をさえぎるものがないので、荒れやすく、激流になりやすく、危険がいっぱい。
ムリなリクエストをせず、あなたのスキルに合ったポイントでダイビングしましょう。
普通のダイブサイトでも、流れていることはあるものです。そんなところで流れに慣れてから、外洋ポイントに挑戦するのが良いでしょう。
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海域を熟知している地元のショップを選びましょう
地元のショップは、潜っている回数も多いし、お客を連れない下見や調査ダイビングも行っています。刻々と変化する潮の流れの強弱や向きなども把握しているものです。
難易度の高いダイブサイトほど、地元の大型ショップを使うのが良いでしょう。
安心・安全なだけでなく、生物に詳しいというメリットもあります。
また、お客が多く集まる大型ショップでは、グループ分けもしやすいです。
初心者やエアの消費の早い人などでも安心してダイビングできるグループ分けをしてもらえるはず。
安全にダイビングできる体調を維持しましょう
1日のダイビング費用、割と高めですよね。
収入多くて良い物食べ過ぎて、健康診断結果が良くないダイバー多いです。
血圧やコレステロールが高いと、減圧症の可能性も高まります。
安全にダイビングできるよう、健康管理にも気を使ってください。
エマージェンシーグッズを携行しましょう
万一の事態に備えて、水面にいる漂流者を見つけてもらえるアイテムを携行しましょう。
シグナルフロート
ボートダイビングする場合は、シグナルフロートをBCDのポケットに入れておくことをおすすめします。
安全停止時に水中から上げておくと、早めにボートに見つけてもらえて、浮上したらすぐに迎えに来てもらえます。
波がある海面に浮いているダイバーの頭は、低いダイビングボートからは見つけにくいです。高さがあり、目立つ色のシグナルフロートをあげているだけで、見つけてもらいやすくなります。
ミラー
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鏡で太陽の光を反射させるのでも、捜索者から見つけてもらいやすくなります。
魚に鏡に映った自分の姿を見せて、反応を観察するのも楽しいもの。
かさばらず軽いものなので、BCDにぶら下げておくことをおすすめします。
音を立出すホイッスルやベル、ダイブアラートなど
高音を出すアイテムを持っていて、はぐれた時に鳴らすのも良いでしょう。
初代に買ったBCDには、ホイッスルが付いていました。
ダイブアラートは、BCDのインフレ―ターへの吸気ホースに付けて使います。
遠くまで届く高音がでるので、ドリフトダイビングが好きな方は、BCDに付けてダイビングしましょう。
水中ライト
エマージェンシーグッズを持っていない場合や漂流中に暗くなってきた場合は、水中ライトを点灯させることも効果的です。
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まとめ
沖縄県の西表島南西にある中御神島(オガン)の沖合でドリフトダイビングをしている際、グループより先に水面に浮上させられた2人の男性が行方不明になる事故が発生。1名は発見されましたが、死亡していました。もう1名は2か月たっても見つかっていません。
同様の事故に遭わないためには、ご本人も安全にダイビングをできる体調を維持して、信頼できるショップを選び、シグナルフロートなどのエマージェンシーグッズを携行して、ダイビングしましょう。
2023年に発生したダイビング事故
2023年10月10日 沖縄県座間味嘉比島での体験ダイビング中の死亡事故
2023年6月19日 沖縄県糸満沖ルカン礁でのドリフトダイビング中の漂流事故
2023年9月14日 東伊豆稲取海岸でセルフダイビング中の死亡事故
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