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沖縄県糸満沖ルカン礁でのドリフトダイビング中の漂流事故(2023年6月19日)について解説

投稿日:11/20/2023 更新日:

2023年6月19日、沖縄県糸満市沖の「ルカン礁」でドリフトダイビングをしていたグループが漂流し、ダイビングボートに戻れなくなり、海上保安庁に救助される事故がありました。

ダイビング中に、ボートにダイバーの位置を示すためのフロートがロープから外れてダイバーと違う方向に流れてゆき、ボートは外れたフロートを追って進んだことにより、ボートとダイバーがはぐれてしまいました。

事故者は、2名のインストラクターと5名のお客の、合計7名。2ショップの乗り合い船でした。

この記事では、事故の詳しい内容、事故を起こしてしまった原因、同じ事故に遭わないための対策をご紹介します。

「ルカン礁」はどのようなダイブサイト?

沖縄のサンゴ

「ルカン礁」は、沖縄県糸満市、糸満漁港の西、約10kmにある、周囲約6kmのドーナツ型のサンゴ礁です。

海底から切り立った崖の向こう側にサンゴ礁が広がっており、深い所では水深40mもあります。
条件が良いと40mオーバーにもなる透明度の中、ドロップオフの壁沿いに中層を泳いで、群れる魚や、外洋を通り過ぎる大物などを楽しむダイナミックな海域。
流れに乗って泳ぐドリフトダイビングが主流です。

サメ(ネムリブカ)、ウミガメ、ロウニンアジ、アカヒメジとノコギリダイの群れなどが見られます。

人気の高いダイビングポイントですが、外洋にあるため流れが速くなることもあります。
このため、やや上級者向けとされていますが、中性浮力を取って一定の水深を保ちながら、流れに乗って進むスキルのあるダイバーでしたら、安全に楽しむことができます。

この地域でのドリフトダイビング

流れのある海域で、流れに乗って移動するドリフトダイビング。ダイビング終了後、エントリーした場所とは異なる場所に浮上するので、浮上したダイバーをボートが素早く見つけることが、安全のための最重要ポイント。

この地域のドリフトダイビングでは、ロープにつながれた水面フロートをグループのリーダーが引っ張りながら移動し、ボートは、水面に浮かぶフロートを目印にダイバーを追って移動してゆきます。
ダイバーが安全停止している際も、ボートはフロートの近くで待機しているので、安全停止を終えてダイバー浮上した際、ボートはすぐに迎えに行くことができます。

また、安全対策として、海に入る前に、インストラクターとお客のダイバー、ボート操縦者の全員で、潜水時間、コースや浮上地点、使用するフロートについてのブリーフィングを行います。

ばらばらにエントリー、潜降すると流されてはぐれてしまうので、全員同時にまとまってエントリー、潜降することや、まとまって移動、全員まとまって浮上、安全停止、エキジットすることも、ブリーフィングで伝えられます。

事故当時の海況

事故当時の海況は、2mの波。天気は曇りで、西南西から風速8~9mの強い風が吹いていました。

事故の経緯

事故者は7名
・インストラクター: 30代男性1名、40代男性1名
・お客:40代男性1名、40代女性3名、50代男性1名

事故が起こった経緯について、時間を追ってご説明します。

9:00頃 糸満漁港からダイビング船が出港

8:30頃港に集合し、2ショップのグループが乗り合わせて、ダイビングに出発した。

10:05頃 ルカン礁付近でダイビングを開始

先頭をガイドするインストラクターが、水面に浮かぶフロートをつないだロープを持って泳いでいた。

ダイビング中 フロートが外れているのに気いたイントラが1人で浮上

途中で、このフロートがロープから外れていることに気づき、海面に浮上。
流れているだけのフロートを追う船を追いようとしたが追いつかず、1人グループからはぐれた状態で漂流してしまった。
目印になるフロートを持って、BCDに空気を入れて浮いた状態で、救助を待つことにした。

11:20頃 ダイビング船の船長がフロートだけが流れていることに気づく

11時ころにダイビングを終えて浮上する予定だったが、ダイバーが現れず、フロートを確認してみたところ、フロートから伸びたロープが途中で切れていた。

11:50頃 「ダイビング中の7名が行方不明になった」と118番通報

ダイビング船の船長が、「ダイビング中の7名が行方不明になった」と118番通報し、捜索が始まった。
海保は巡視船2隻、ヘリコプターなど3機を付近の海域に派遣し、捜索と救助を行った。

13:55頃 6名のダイバーを発見し、救助が始まる

ルカン礁から南東約5キロの海上で、6名が浮いているところ発見。
この時、安全停止用のシグナルフロートは1つしか浮いていなかった。

14:10~20 6名のうちの2名をヘリコプターによって救助。

14:30頃 海に残る4名に対し、巡視船からネットを垂らして登ってもらうよう試みたが、波が高くダイバーがネットを登れず失敗。リコプターによる救助に切り替えた。

15:00頃 6名の救助を完了。

14:45頃 単独で流されてしまったイントラを発見

インストラクターがシグナルフロートを持って浮いているところを、ヘリコプターに見つけてもらえた。
15:05頃 救助完了。

事故の要因:ショップ側

この事故は、ボートにダイバーの位置を示すためのフロートがロープから外れてしまったことが発端です。準備・確認不足で、ショップ側のミスといえます。
外れた原因は公表されていませんが、締め付けが緩かったのか、痛んでいたロープが途中で切れてしまった可能性があります。

そもそも、風が強く、外洋にあるルカン礁でのドリフトダイビングに適したコンディションではなかったようです。波・風があり、船での救助も困難だったほどの波がありました。
海況が悪いのにも関わらす、外洋にドリフトダイビンに出かける判断をしたことも、誤りだった可能性があります。

事故の要因:ダイバー側

一方でダイバー側からは、海況が悪いのにルカン礁に行って大丈夫なのか、不安の声は上がらなかったのでしょうか。

また、救助時、2名のインストラクターがそれぞれ1本のシグナルフロートを持っていただけなのも、気になります。
お客だとはいえ、沖合でドリフトダイビングするのにシグナルフロートを持っていないのは、安全対策が不足しているように感じます。

じゅうぶんなスキルを持っていたのか、という点に関しては、悪天候を押して外洋に出るくらいなので、ショップのお墨付きをもらっていると考えられます。

同じ事故に巻き込まれないための自衛策

救助してもらえたからよかったものの、ショップのミスで3時間も漂流させられるなんて、たまったものではありません。

同じ事故に巻き込まれないための自衛策についてご提案します。

荒天時には潜らないかポイントを変えてもらおう

事故当時は波や風がやや強い状況にあり、そのことが事故の発生や、救助の難航につながっています。思わぬ事故に巻き込まれないように、荒天時は潜らない選択を取りましょう。
海況が悪い場合は、ショップもキャンセル料を取らないでしょう。

そうとは言っても沖縄まで行ってダイビングしないなんてダメでしょうから、風下で穏やかなポイントにダイビングするよう、ポイントを変えてもらいましょう。

安全対策のエマージェンシーグッズを携行しましょう

万一の事態に備えて、水面にいる漂流者を見つけてもらえるアイテムを携行しましょう。

GPS発信器(ビーコン) SEAKER_L3

位置情報発信器 SEAKER-L3

約100kmの距離にまで位置情報を送信できる機器です。

万一の遭難時には、SOSスイッチを9回連打することにより、位置情報を含んだ救難信号を発信できます。
すると、TRACKERアプリへ救難を要請、さらに事前登録しておいたメールアドレスに自動的に救助要請メールを送信します。

位置を示して救助要請信号を発信できるので、スムーズな救助が期待できます。

高価なので、GPS発信器を使っているショップを選んで、ガイドから絶対に離れない、というのも代替手段になりますよ。

商品紹介サイトへのリンク

シグナルフロート

安全停止中にダイバーの位置を水面のボートに知らせるシグナルフロート、通常ガイドだけが上げていますが、ドリフトダイビングする場合は、全員が携行しましょう。

万一、はぐれて流されてしまった場合に、あなたの場所をボートに知らせるのに役立ちます。
波がある海面に浮いているダイバーの頭は、低いダイビングボートからは見つけにくいです。高さがあり、目立つ色のシグナルフロートをあげているだけで、見つけてもらいやすくなります。

ミラー

ミラーは水面で太陽光を反射させて使います。小型で携帯性が高く、反射光は遠くまで届くことが利点です。

魚に鏡に映った自分の姿を見せて、反応を観察するのも楽しいもの。
かさばらず軽いものなので、BCDにぶら下げておくことをおすすめします。

水中ライト

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生物の観察に役立つ水中ライトには、安全対策の一面もあります。漂流中に暗くなってきた場合に、あなたの居場所を示すのに効果的です。

ホイッスル・ベル

高音を遠くまで飛ばすことのできるホイッスル、いざというときのためにBCDに付けておきましょう。

ベルを持っている場合、救助要請にも役立つかもしれません。

ダイブアラート

ダイブアラートは、ボートのエンジン音に打ち消されにくく遠くまで届く高音が出ます。BCDのホースとインフレーターの間に取り付けておき、レギュレーターからの空気を利用して音を出します。

水中用、陸上用、どちらも使えるものの3種類があります。少なくとも陸上で使えるものを選びましょう。

まとめ

沖縄県糸満沖ルカン礁でのドリフトダイビング中に漂流してしまった事故、船からダイバーの目印となるフロートが外れてしまったことが原因です。

ショップもミスをすることが分かりました。万一の場合にあなたを見つけてもらえるために、ドリフトダイビングする場合はシグナルフロートを携行しましょう。遠くまで高音を飛ばすことのできるホイッスルをBCDに付けておくこともおすすめします。

また、天候・海況が良くなかったため、救助にも時間を要しました。海況が良くないときはダイビングを断りましょう。海峡は悪い場合、キャンセル料は取られないでしょう。

2023年に発生したダイビング事故

2023年10月10日 沖縄県座間味嘉比島での体験ダイビング中の死亡事故

2023年9月18日 沖縄県西表島沖オガンでのドリフトダイビング中の死亡事故

2023年9月14日 東伊豆稲取海岸でセルフダイビング中の死亡事故

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taka

大好きなダイビングは17年目に突入。写真撮影も大好きで、今は光の当て方を追求しています。ショップの店員さんとダイビング器材談義をするのも楽しい。 潜った海は、太平洋、日本海、インド洋、紅海、カリブ海。赤道周辺の海をぐるりと制覇するのを目指してます。

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